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第4章「怪物たちの死闘」|05:【回想】月岡陶子の来訪

2015年08月25日

先読み情報
エネミーズ/1996 1

VIEW:瀬田椿 
SHEET:1-4-005
DATE:1996/08/08 THU 21:15 
PLACE:練馬 上石神井 

瀬田椿が殺戮に飽きた頃、月岡陶子が彼女のもとを訪れ、ある提案をする


 やはり、腕をもいだりしなくて正解だった。
〈セイレーン〉に変身した瀬田椿は、自身の考えの正しさに少し誇らしい気分になった。
 夫は爪で肩口を少し斬り裂いただけで、火のついたように泣き喚いた。「痛い痛い痛い痛い痛い」と叫び、床を転げ回った。この調子だと、腕をもいでいれば、その痛みであっさり死んでしまったかもしれない。  それは困る。
 こちらが恨みの言葉を言う隙もなく、姑はあっさり死んでしまった。あれでは復讐にも仕返しにもならない。その分、夫には頑張ってもらわないと。
〈セイレーン〉は慎重にやることにした。
 悲鳴を聞きつけられるのは面倒なので、まず喉を軽く殴った。気をつけていたので、姑の時のように死ぬまでのダメージは与えなかった。上手い具合に喉だけを潰すと、夫はそれでもう声を出すことができなかった。
 叫ぶことも話すこともできなくなった分、夫はその表情だけで、椿に必死に懇願した。殺さないで殺さないで殺さないでコロサナイデ。

「……ダメ」

〈セイレーン〉はくすくす笑いながら、そう優しく答えた。

「でも、すぐには殺さない」

 喉を潰したのに続いて、〈セイレーン〉はその爪で夫の両足を深く斬った。それで彼はもう逃げられなくなった。
 身体を少しずつ斬り刻み、じわじわと恐怖と苦痛を与えるつもりだった。実際、そうやってみたのだが、〈セイレーン〉の思惑は外れた。恐怖も苦痛も感じているのだろうが、喉を潰された夫は、それを言葉や叫びにすることができなくなっていた。

「……あぁ、それだと少しも面白くないんだ」

 夜明けまでなぶりものにするつもりだったが、結局、深夜になる前に彼女は飽きてしまった。

「……最後の最後までつまらない男」

〈セイレーン〉は呟き、握った拳を血まみれになった夫の顔に叩きつけた。
 ……死んだ。
 夫と姑が死んで、〈セイレーン〉の心は驚くほど軽くなっていた。
 自然と変身が解けた身体を、ソファに投げ出す。近くには夫と姑の死体が転がっていたが、今はあまり気にならなかった。どうするかは、少し眠ってから考えることにしよう。
 そう決めて、重くなった瞼を自然に閉じた瞬間だった。
 玄関フォンの呼び出し音が鳴った。時計を見れば、夜中の十二時を少し回ったところだった。夫と姑を殺した直後でなくとも、警戒するところだ。
 だが、なぜか瀬田椿は躊躇なく、呼び出しに応じた。ボタンを押すと、小さなモニターに三十過ぎのきれいな女の顔が映っていた。

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