新着情報一覧Topics

第4章「怪物たちの死闘」|07:陶子の告発は続く

2015年08月27日

先読み情報
エネミーズ/1996 1

VIEW:三原一也 
SHEET:1-4-007
DATE:1996/08/13 TUE 16:01 
PLACE:塔 

陶子の告発は思わぬ人物たちにも向けられることになる


 陶子の説明を聞いて、一也は以前、巧と話したことを思い返した。恐ろしい怪物が百体、野に放たれた。巧が案じるよりも、正直、一也は事態を楽観視していた。いくら力を得ても、誰もが急に道を踏み外すわけではないと……。

「怪物の力を悪用しようとしたのは、〈スライム〉や〈ガネーシャ〉の彼らだけじゃないんだよ」

 まだ一也に支えられていた冴子……陶子によって精神を支配されている彼女の身体は、ゆっくりと起き上がり、自分の足で石畳の床の上に立った。

「ぼ、僕は! 僕はそういうことじゃなくて……」

 冴子に虚ろな視線を向けられると、巧は慌てて両手を振った。

「別にあいつらを襲ってやろうとかじゃなくて、いきなり変なとこに連れ込まれて。それでただ逃げるだけのつもりで……」

 渋谷でチーマーのアジトに連れ込まれた際のことを、巧は必死で弁解していた。だが、冴子は興味なさげに、すぐに視線を移した……波岡とめぐみのふたりに向けて。

「山城君、それはよくわかってるから。あなたは善良な人間。それがつまらないって話だから……それと比べると、波岡さんと刈田めぐみさんの行動は興味深かった」
「やめてよ! 余計なこと言わないでよ! ひとのこと勝手に操って、それで……やめてよ余計なことまで言うの!」

 突然、めぐみが叫んだ。よほど怒っているのが、その肩を激しく震わせている。

「それに、めぐみさんの場合、その動機は復讐だったから、〈スライム〉や〈ガネーシャ〉よりも理解はできた。許せない相手がいる、人間にはない強い力がある。だとすれば、それを使ってしまうのが普通の人間」

 めぐみはなにか言いかけたが、観念したように口を閉じた。

「六本木の地下神殿に呼ばれる前、めぐみさんは所属していた事務所から解雇を通知されていた。だから……回復して、自分が怪物になれると知ってすぐ、彼女は復讐することを思いついた。あの〈フェンリル〉の姿になれば、自分とは知られずに済むし」

 一也が様子を窺うと、めぐみはきつく唇を噛みしめていた。そして、

「だからなんだっていうのよ! 自分で好きで怪物にされたんじゃないもん! いいでしょ、ちょっとくらいは自分のために使っても……それに……」

 一瞬、言い淀んだめぐみは、そのままうつむいた。

「それに……殺してはないし……」
「それも知ってる。あなた、自分の力に驚いて、復讐もできないで逃げ出したんだもんね。わかってる」

 陶子の声には、妙に優しい響きが含まれていた。

≪前へ 先読み一覧へ 次へ≫



新着情報一覧へ戻る

注目シリーズPick Up Series

新着情報Topics

試し読み月間ランキングRanking

  • 第1位

    盾の勇者の成り上がり 1  アネコユサギ

  • 第2位

    駆除人 1 ~ツナギを着た転生者~ 花黒子

  • 第3位

    盾の勇者の成り上がり 2  アネコユサギ

  • 第4位

    二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 1 ~裏切り王女~ 木塚ネロ

  • 第5位

    二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 2 ~夢狂いの魔術師~ 木塚ネロ

  • 第6位

    盾の勇者の成り上がり 13  アネコユサギ

  • 第7位

    盾の勇者の成り上がり 19  アネコユサギ

  • 第8位

    盾の勇者の成り上がり 3  アネコユサギ

  • 第9位

    アラフォー賢者の異世界生活日記 1  寿安清

  • 第10位

    盾の勇者の成り上がり 4  アネコユサギ

編集部ツイートTwitter