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第4章「怪物たちの死闘」|08:殴り込み・その1

2015年08月28日

先読み情報
エネミーズ/1996 1

VIEW:刈田めぐみ 
SHEET:1-4-008
DATE:1996/08/13 TUE 16:07 
PLACE:塔 

刈田めぐみは八月七日の二回目の変身のことを回想する


「もういいよ。自分のことだから、自分で言う!」

 そう宣言すると、刈田めぐみはあの日のことを語り始めた。

「みんなと同じで、あたしも六本木の神殿で怪物になった後、ずっと眠り込んでた。でも、意識が戻ったのは意外と早くて、あの次の次の日、ええと、八月七日だった」

 ──目覚めたのは鷺宮の自宅のベッドだった。自分以外の家族はちょうど旅行に出ていたので、家にはひとりだった。
 起きてすぐ感じた、強烈な空腹を埋めるため、めぐみは冷蔵庫の中の食料を、片っ端から腹に詰め込んでいった。ようやく満腹を覚えて、めぐみは唐突に思った。

「──変身、またできるのかな?」

 それが気になった途端、心臓のあたりにそれまで感じたことのない熱さが生まれた。めぐみは即座にそこに手を置き、祈った。
 次の瞬間、めぐみの小さな身体は、大人の男よりも二回りはでかい、白い毛に包まれた怪物──〈フェンリル〉に姿を変えた。部屋の隅に置かれた姿見を使い、彼女はその姿を子細に観察した。
 神殿で変身した時、自分の姿を映すものはなかったが、どんな形になったのかはぼんやり理解していた。しかし、こうしてはっきり向き合うのは初めてだ。

(ま、こんなもんか)

 できれば、もう少しカッコいいのがよかったが、最悪ではなかった。あの神殿で見かけた、ヌルヌルして形も定かでないものや、昆虫のオバケのようなものにならなかっただけでも、感謝すべきかもしれない。
 部屋の中だったので飛び跳ねることはしなかったが、身体が嘘のように軽かった。上背が伸びているせいで、見慣れた室内も狭く、そして高いところから見下ろす感覚は新鮮だった。
 めぐみ──〈フェンリル〉はもういちど心臓のあたりに気持ちを集中させた。怪物への変身の時と同じく、人間に戻るのも一瞬で、そしてあっけなかった。

「……よし」

 めぐみはすぐに着替えを済ませ、家を出た。目的地は道玄坂の上にある、彼女の所属していた芸能プロダクションだった。
 雑居ビルのエレベーターを目的の五階で降りると、彼女は急ぎ足でフロアの隅、階段の陰になっている場所に隠れた。
 そして──変身した。
 プロダクションのある五〇五号室の前に立った。間違えては大変なので、もういちど部屋番号と、ドアに貼られた会社名のプレートを確認する。

(……間違いない)

 めぐみ──フェンリルはその大きな手でノブを握った。ゆっくりとドアを開けるつもりだったが、それはできなくなった。
 ドアノブを握り潰してしまったからだ。

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