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第4章「怪物たちの死闘」|09:殴り込み・その2

2015年08月29日

先読み情報
エネミーズ/1996 1

VIEW:刈田めぐみ 
SHEET:1-4-009
DATE:1996/08/13 TUE 16:15 
PLACE:塔 

芸能事務所に殴り込んだ〈フェンリル〉は自身の能力に戦慄する


『ホントはね、こっそり入って、脅かしてやるつもりだったんだ。腰とか抜かすところ見られたら、それでいいと思ってたし。でも……』

 ──ドアノブを握り潰した〈フェンリル〉はすぐにパニックに陥ってしまった。(嘘でしょ?)となって、気づけば、ドア全体に(ほんの少し)力をかけてしまっていた。
 そして、「……っ」と思った時には、もう遅かった。
 蝶番を留めていたネジはあっさり弾け飛び、ドアが外れて室内へと倒れ込んだ。ただ、作りつけの下駄箱がドアを中途半端に受け止め、クッションになってさほど音は立てなかった。
 ドアがなくなった玄関からは、中がすべて見通せた。驚いた顔で自分のことを見ている事務所の社長、そして担当マネージャーがちょうど並んで立っていた。

(……こいつら)

 ふたりの中年男は驚いていた。その顔があまりにも間抜けだったことに、めぐみは言葉にし難い怒りを覚えた。

『そン時、あたし、なんとなく、ううん、はっきりわかった。社長もマネージャーも、よく事態がわかってないんだって。〈フェンリル〉が本物の怪物かどうかとかもよく認識してなくて、ただドアが壊されてなんか入ってきたことに、びっくりしてるだけなんだって。それがね……急に苛ついたっていうか。だから、それまではただ脅かすだけのつもりだったんだけど、急に思っちゃったの──こいつら、食い殺してやろうかって』

 ──〈フェンリル〉の胸に言いようのない、そして理不尽な怒りが膨れ上がった。
 大きな足で倒れたドアを踏み越え、事務所の中に入る。特に意識することもなく、その口をいっぱいに開き、閉じた。
 それと同時に、〈フェンリル〉の正面、社長とマネージャーが背にしていた壁の上部と、天井の一部が消滅した。
 ふたりのどちらかはわからないが、事態を察して、すぐに「ぎゃあああああ」という悲鳴が上がった。
 それを聞いた〈フェンリル〉──めぐみは我に返った。ふたりに対する殺意はすでに消え失せていて、残っていたのは恐怖感だった。消滅した壁と天井──あれを自分がやったのだとわかって、ただひたすら恐ろしくなった。
 気づけば、変身した姿のまま、その場を後にして、雑居ビルの階段を駆け下りていた。
 その後、どうなったのか、めぐみは確かめていない。


「──でね、次の日。冴子さん? 陶子さん? どっちでもいいけど、どっちかがあたしの家に来たわけ。その〈セイレーン〉と一緒に……以上」

 吐き出すように言うと、めぐみはついでに大きな溜息をついた。

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