新着情報一覧Topics

第4章「怪物たちの死闘」|10:底知れぬ力

2015年08月30日

先読み情報
エネミーズ/1996 1

VIEW:三原一也 
SHEET:1-4-010
DATE:1996/08/13 TUE 16:22 
PLACE:塔 

めぐみの告白が終わる。陶子は波岡については敢えて言及しない


「つまり、そういうこと。わかった? 一也君」

 冴子の身体を借りた陶子は、一也に真っ直ぐ視線を向けていた。

「めぐみさんのことはそんな感じ。彼女は嘘はついていない。波岡さんのことは省略ね。彼も恨みがある出版社に嫌がらせしようとして、結局、途中で怖くなってやめた。結果、被害者は出なかったけど、明確に悪意や殺意が生まれた瞬間はあった」

 波岡はなにも言わない。黙ってそっぽを向いただけだった。

「だから、あたしは……なにもしてないって!」

 めぐみは声を荒げたが、陶子は「だから、それはわかってる」と冷静に応えた。

「でも、なにもせずに逃げ帰ったのは、偶然が助けてくれただけのこと。怪物になる力を持てば、誰でもそれを使ってしまう」

「待て、陶子」一也は堪らず口を開いた。「そうかもしれない。だけど、そんなことがわかってて、その怪物を生み出したおまえは、いったいなんなんだ? なにがしたいんだ? それにどんな意味があるんだ? 現実をゲームの世界に変える、それはわかった。わかったけど、その先になにがあるんだ」

 それは一也にとって、心底からの疑問だった。一連の不思議な事件の詳細が明らかになればなるほど、陶子の気持ちだけが、考えだけが、どんどんわからなくなっていく。

「……今に、わかる」

 それが答えだった。陶子に返事をするつもりはないらしい。
 彼女は〈セイレーン〉を見た。
 めぐみが話をする間、彫像のようにじっと動かなかったその人魚の怪物が、大きく胸を張った。

「こいつをまた連れてきたのはどうしてだ? 俺のことを洗脳して……」

 陶子は──冴子の身体は首を横に振った。

「今は違う。彼女に正面からあなたと戦ってもらうため」
「三原さん、ぼ、僕が確かめます」

 言うなり、傍らにいた巧が〈バグ〉へと変身した。そして、その巨大な複眼を〈セイレーン〉へと向ける。

「……三原さん。データ、見えました。例の洗脳詠唱以外は特殊な能力はないです。機動力はあるけど、それだって僕の方が速い。攻撃力も僕の方がある。正面から来るなら、逆に心配はないです」

 口の触手の束を唸らせ、〈バグ〉がそう報告した。しかし、それを聞いても、一也は安心できなかった。ついさっき、〈フェンリル〉と〈ケンタウロス〉相手にリライブを二度も使っている。まさに力を使い果たした感じだ。そもそもそれで、変身自体が可能なのか。
 そして……。
 一也は感じていた。
 不動のまま胸を張った〈セイレーン〉から、底知れぬ力を。

≪前へ 先読み一覧へ 次へ≫



新着情報一覧へ戻る

注目シリーズPick Up Series

新着情報Topics

試し読み月間ランキングRanking

  • 第1位

    盾の勇者の成り上がり 1  アネコユサギ

  • 第2位

    駆除人 1 ~ツナギを着た転生者~ 花黒子

  • 第3位

    盾の勇者の成り上がり 2  アネコユサギ

  • 第4位

    二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 1 ~裏切り王女~ 木塚ネロ

  • 第5位

    二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 2 ~夢狂いの魔術師~ 木塚ネロ

  • 第6位

    盾の勇者の成り上がり 13  アネコユサギ

  • 第7位

    盾の勇者の成り上がり 19  アネコユサギ

  • 第8位

    盾の勇者の成り上がり 3  アネコユサギ

  • 第9位

    アラフォー賢者の異世界生活日記 1  寿安清

  • 第10位

    盾の勇者の成り上がり 4  アネコユサギ

編集部ツイートTwitter