2015年09月20日
VIEW:三原一也
SHEET:1-4-031
DATE:1996/08/13 TUE 17:20
PLACE:荒野
ノヴァ化した〈セイレーン〉は意外な運命を辿る
「みんなが殺されてくとこだけじゃないよ……」〈フェンリル〉が口を開いた。「どうしてだかわかんないけど、自分が死んだ後のこともずっと見てた。この先、三原さんが体験したことはぜんぶ……あの西武新宿駅での、〈ドラゴン〉と〈勇者〉の決戦まで」
「俺もだ」と、〈ケンタウロス〉が言えば、〈バグ〉も「僕もです」と声を上げた。
「……」
一也は思いを巡らせた。
──〈フェンリル〉、〈ケンタウロス〉、〈バグ〉が殺され、〈セイレーン〉に加えて、ノヴァ化した〈スライム〉と〈ガネーシャ〉まで現れた。その事態は一也を極限まで追い込み、彼を〈ドラゴン〉へと変身させた。
〈ドラゴン〉……自分は一瞬で〈セイレーン〉たち巨大な怪物を葬り去った。
そして……その後のことは記憶が曖昧だ。
時間と情報と体験が奔流となり、ようやく認識できるレベルになった時、自分は西武新宿駅を破壊していた。
そして〈勇者〉たちとの対決……。
「三原さん、見てください! 〈セイレーン〉が!」
〈バグ〉の叫びに、一也は現実に引き戻された。振り向いて〈セイレーン〉の様子を確認する。
「……あれは」
こちらを追いかけ、宙を駆けてくる〈セイレーン〉、その身体が崩壊を始めていた。
背ビレが塵のようになり、ひびの入った小さなヒレが粉々に割れて、胴体から脱落していく。
「なにが起きてるんだ?」
誰に問いかけたわけでもない一也の言葉に、〈ケンタウロス〉が答えた。
「さっきからだよ。よく見てみたら、あのデカブツ、身体のあちこちがひびだらけになってた。理屈はおまえさんの方が知ってるんじゃないのか?」
逆に尋ねられ、一也は首を横に振った。
「ただ……ノヴァ化の無理が祟ってるのかもしれない。だから……」
ボオオオオオオォォォォォォォッッ!
〈セイレーン〉が苦しげに鳴いた。
同時に大きな背ビレが吹き飛び、それが合図だったかのように、その身体が爆発するように砕け散った。
「三原さん!」
〈バグ〉が一也に覆い被さった。砕けた巨体が礫となって、彼らの方まで飛んできたのだ。
「……とりあえずは助かったみたいだな。殺されずに済んだってわけだ」
〈ケンタウロス〉がようやく足を止めた。
ノヴァ化した〈セイレーン〉との戦いは、ようやく終わった。それを証明するかのように、紫の瘴気に満ちた荒野も消え、元の西新宿の光景が甦ろうとしていた。
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